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オベロン原典集成:オベロンはモルガンの子?

やっと西川秀和さんの『オベロン原典集成』を読み終わりました。

オベロン原典集成

オベロン原典集成

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元々シェイクスピアの本は高校〜大学で読む機会が多かったので結構好きなのですが、FGOでオベロンが登場してますます興味が湧きました。『真夏の夜の夢』はかなりしっかり読んだので(演劇すらやった)個人的に思い入れのある作品です。

FGOはもともとFateシリーズが初期の頃からアーサー王を扱っているので円卓の騎士や妖精と関わりの深い作品。個人的にはモルガンや円卓の騎士達をとても魅力的に描いてくれているのでとても嬉しいです。実際、人気もかなり高いしね。水着も最近発表されて界隈は大賑わいです。

2部6章が公開された頃だと思いますが、西川秀和さんがオベロンが登場する作品の原典を集めて一冊の本を出してくれるとTwitterで知り、喜んで買いました。オベロンはティターニアとセットでよく妖精の王と女王として、近年の様々な作品で登場します。そのきっかけとなったのがシェイクスピアが書いた『真夏の夜の夢』なのですが、どうやらオベロンは昔から色々な物語に登場していた様子。FGOの影響もあってオベロンに興味津々だった私からしたら正に求めていた本でした。

西川秀和さん、他にも色々なキャラクターの原典を翻訳しています。しかも個人出版。凄い! オベロンの他にビリー・ザ・キッド、シャルル=アンリ・サンソン、マンドリカルド、ロビン・フッド、ポール・バニヤンジェロニモ、などなど。気づいたと思いますが、FGOに登場する人ばかりです。もうこの中に推しサーヴァントがいる人やFGOを通して歴史や英雄に興味を持った人はこの方を支援すべきだと思います(笑)。僕もほとんど買いました。売り切れも多いですがPDF版なら今も買えるので電子版を確保するのもあり。翻訳して欲しい原典も募集しているので、もしかするとお願いすれば好きなキャラクターの原典が翻訳してもらえるかも? 念の為言うと、もちろん案件ではありませんw。こんな小さなブログで案件とかないので。勝手にお気に入りの作者を紹介しております。

興味ある人は下のリンクからどうぞ。上の画像はAmazonのリンクですが、こちらはBOOTHとFANBOXのリンクです。

poeta-laureatus.booth.pm

poeta-laureatus.fanbox.cc

『オベロン原典集成』感想

読んでみるとオベロンは最初、イメージしていた妖精っぽくはなく、どちらかというと様々な力を有した小さな人間(または亜人間)という感じでだったらしい。あとあと妖精としてのイメージが強くなっていったのかなぁ。物語そのものは昔からある他の英雄譚と似ている感じでした。どうやら歴史的な(地域的な)出来事に色々と盛り付けされたようです。まあそこはアーサー王物語とかも似たようなものですね。全然面白かったです。かなりオベロンの解像度が上がりました。「これがシェイクスピア以降のオベロン像に繋がっていったのかぁ」と納得できたので満足です。

個人的に面白かったのがキリスト教との関連。キリスト教文化の中で書かれているので(しかもイスラム教を超敵視していた時代)、イスラム教が超悪者として描かれています。ちょくちょく敵は他宗教の信仰者ということで戦争と勝利(=虐殺)が正当化され、正義や超自然的な力は基本的に聖書の神に帰結させています。あと、物語に権威をつけるためだと思いますが、有名人との登場人物を結びつけているのが面白い。特に面白かったのがフランスの英雄譚『ユオン・ド・ボルドー』。なんと、オベロンはモルガンとユリウス・カエサルの間に生まれた妖精であり、聖ゲオルギウスを兄に持つという「設定」でした。FGOのマスターからしたら超面白い。

『オベロン原典集成』からの抜粋したオベロンのセリフです:

わが救世主である神にかけて、私を愛情深く育てたのはユリウス・カエサルであり、たぐい稀なる美しさを持つモルガン・ル・フェが私の母だ。その両人が私をもうけて産んだ。(100頁)

今度はゲオルギウスとオベロンが兄弟として生まれた箇所です:

2人の嬰児に見かけと大きさに似合うだけの栄誉がそれぞれ与えられた。騎士たちは、兄のゲオルギウスと呼ばれる嬰児と弟のオベロン・ル・フェを見分けることができなかった。(174頁)

ちょっとFGOのキャラクターを使って図にするとこんな感じ: 超おもろい。 ゲオルギウス先生なんかオベロンと兄弟になってるし、FGO内ではお互い毛嫌いしてるのにモルガンとオベロンはなんか親子になってるし。

ユリウス・カエサルについてはあのガイウス・ユリウス・カエサルなのかな、と気になり、著者本人にTwitterで聞いてみました。実は前も質問したことがあるのですが、毎回丁寧に答えてくださいます。まず、ユリウス・カエサルですが、どうもガイウス・ユリウス・カエサルなのかは不明のようです。カエサルの名前自体が皇帝を指す一般名詞として使われているらしく、更に当時の語りは聞き手が知っている有名人を使うことで物語に箔をつけていたようなので、どの時代のカエサルなのかも分からないようです。とりあえずあのガイウスさんだと解釈したら上の図になるので面白いです。非常に面白い。

感想はこんな感じです。もっと語りたい部分もありますが記事が長くなりすぎてもアレなのでここで止めます。良ければぜひ手に取ってください。普通に読み物として面白かったので、知識の探究として読むことにも、単におとぎ話として読むことにもオススメだと思いました。